どこまで深く潜る

オレンジ色の彼

マクベス 2016.07.11

  • 2016.07.11

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東京グローブ座マクベス32公演中、17公演目。つまり折り返して後半戦スタートするとなる節目の日。神々しい最前列で観劇。会場に入り公演が始まるのを待つ間、ステージのセットを見渡すだけでドキドキが止まらない。そもそも、グローブ座へ向かう電車の中で、数時間後のことを考えると吐きそうで仕方なかった。刻一刻と迫る時間。場内のアナウンスも流れ、ざわついていた会場も静まり、空気が張りつめている。
 
 
 

そしてついに始まった。最初の殺陣のシーンにて上段から出てきたマクベス。圧倒的な存在感。とにかくかっこいい。かっこいいという言葉以外にどう表現したらよいのか語彙力の乏しい自分には分からないがとにかくかっこいい。尚且つ見事な剣捌き。そして「こんな良いとも悪いとも言える日ははじめてだ」というセリフ。雑誌のインタビューで丸山隆平さんが一番最初のセリフであると言っておられたため、これか!!と1人で興奮。

 
魔物に国王になることを予言されたときの驚いた様な、怯えた様な表情。ここから予言に翻弄されてマクベスは変わっていくんだなぁ。
 
 
ダンカンがマルカムをカンバランド公に任命するシーンでマクベスやバンクォーが拍手をするのだけど、マクベスの拍手の音だけが私の耳には入ってくる。何と都合の良い耳だろうか。あぁ、これが丸山隆平さんの手から出る音なのか。ニコニコしていてやっと“丸ちゃん”を感じられた。
 
 
マクベス夫人とのシーン。お互いに抱き合ったと思えば、マクベス夫人に押し倒されキスキスキス。「もっとだ!もっとくれ!!」と足をバタバタ。今度は回転してマクベスが馬乗りになりキスキスキス。リップ音が聞こえる。マクベスは右手で夫人の腰や腕を撫で回し、続きをしようとするけれど夫人はさせてくれない。それでもしようとする夫人に手を退けられるが背後からのハグ!!からの胸や腰を撫でながら「あとで相談しよう」というのだが!この時の声色!はぁぁぁぁ優しい!マクベスをかわいいと思った瞬間。ラブシーンを見るということだけにスポットを当ててしまうと正直落ち着かなかった。でも私は丸山隆平さんの、マクベスの愛のあるシーンを見れたことは誇りに思う。舞台上に居るのはマクベスなのだが、丸山隆平さんってこんな風に撫でるんだ…、なんて時折思ってしまったことは秘密にしておきたい。
 
 
短剣の幻影。魔物の動かす短剣を掴もうとするマクベスマクベスと魔物の絶妙なコンビネーション。このシーンはずっと見ていたい。短剣の幻影を追うのにこんな表現方法があるのかと度肝を抜かれた。タイミングがばっちり、魔物がうまくマクベスを動かしてくれる。黒子としての魔物の存在が素晴らしかった。完全に短剣とマクベスというシーンになっていた。華麗に舞うマクベス
 
 
血糊にまみれて上段から出てきたマクベス。白いシャツも手もお顔も真紅に染まっている姿に興奮した。あの丸山隆平さんの肌が血で赤く染まっているんだよ。「もう眠りはない、マクベスは眠りを殺した」というセリフの言い方も上手く表現出来ないが印象的。置いてこなければならなかった短剣を持ってきてしまい、その短剣を投げて怯えている姿は可愛らしかった。暗殺を企てて実際に事を為してもやっぱりマクベスは怖さを感じていて、その代わり夫人は強い。夫人が居るからマクベスが男のマクベスとして存在していられるんだなと。
 
 
ダンカン王が殺されたことが発覚して、あたかも初めて知ったかのようにマクベスが出てくる。その時の衣装が裸に黒ガウン!ストーリーに集中すべきだけれどやっぱり本能的に視線が裸にいってしまうよね。引き締まってうっすら割れている腹筋。そこにワンパックはなかった。ついこの間までワンパックだって弄られていたじゃないか!?やんちゃユアボディを錦戸さんと大蔵さんに揉みしだかれてたじゃないか!?やはり丸山隆平さんは仕上げてくる。裸だから汗も見えて堪らない。おまけにスタイルの良い彼だからロング丈のガウンが似合う似合う。顔は小さいわ脚は長いわありがとうマクベス
 
 
バンクォーの暗殺を企てるシーン。癇癪を起こしたかのように壁を叩く。相当狂ってる。序盤にニコニコした顔を垣間見せていたマクベスは居ない。暗殺者がやってきて話し込むようになると流れるように声色も全く変わって圧倒された。暗殺者が退場し階段下に座るマクベスだけにだけライトが当たった後、また恐怖に怯えている姿。繊細で、丁寧で、守ってあげたいなんて感情さえ芽生えた。夫人に甘えて顔を埋めるのだけれど、その時に汗が夫人の衣装に染みてしまっていて、なまものである舞台ならでは。どれだけ偽りの仮面を被っても奥さんだけには弱さを見せてしまう部分はマクベスの人間らしさが滲み出ているなぁ。夫人の手をギュって握って捌けるのはこの後の「奥へ行こう」の時だったかな?かわいくて最高。
 
 
バンクォーが殺され、宴会の席でマクベスには亡霊が見えてしまう。取り乱して逃げ回り、恐怖におののき、それでも平気だ男だと強がるけれどまた怯えてという繰り返し。亡霊が消えて「確かにあいつを見たのだ~!」(>_<)←こんな顔文字がつくような喋り方。子供みたい。テーブルの下に捌けたバンクォーを確認するときの弱々しさ。息づかいも表情も声もコロコロ変わっていって俳優だなぁと改めて。
 
 
魔物にもう一度予言を聞くマクベス。恐ろしい笑顔ってまさにこれ。嬉しい予言を聞いて、まだ予言を乞うと王の幻影が出てくるとまた怖がってる。情緒不安定だな。幻影のダンスが始まって舞台上を逃げ回るのだけど、この時私は絶対口が開いてた。わーわー言いながら逃げているマクベスと躍り続ける幻影は言葉にできない素晴らしさ。にしても、血まみれの赤ちゃんはリアルすぎてホラー。
 
 
マクベス夫人が夢遊病で手を洗い続けているときのお尻の辺りの血は、マクベス夫妻に子供ができないってことなのかな?鈴木裕美さんが稽古で決断したとおっしゃってたけど真意はなんだろう。
 
 
女から生まれた者には俺を殺せないって高をくくってレノックスに「どこでガチョウ面を手に入れた」って言いながらガチョウの真似をするマクベスがかわいい~!まるちゃーん!!!「どーこーのぐーんーぜーーだ?」堪らん~!
夫人の病気を治してほしいと乞い、そののち夫人が亡くなったと聞き「あいつもいつかは死ななければならなかった」ってセリフがあるけれど、マクベスが狂っていなかったら思うところも変わっていたよなぁ。精一杯の強がりかな。夫人を愛していた人だから。
闘うと決めてレノックスに鎧を着せてもらうけど行動が早まって鎧が着れてない上に、結局着てないマクベス。感情の表現が上手い。
 
 
バーナムの森が迫ってきて敵と戦う。「俺の名はマークベースだー!!!」と両手を広げて叫ぶ。この時の声が甲高くて私はやっぱり丸山隆平さんの声が好きなんだと再確認した。低い声から高い声まで自由自在でそこにちゃんと感情があって、観劇しながらハァァァァァァって言ってしまってたと思う。ロスにキスをしてから静かに首を斬るのも印象的であれは悶えた。
マクダフに会っても尚、狂気に満ちた笑いの顔浮かべていてけれど、女の腹を割って出てきたと知ると途端に表情が変わる。あぁ、私は表情が変わる瞬間も好きなんだ。バズリズムでギャグを披露した後にスン顔に変わるあの瞬間のように。
 
 
マクベスは殺されてマクダフが生首を持って出てくるのは観ていて辛かった。生首が上げられて舞台のセットに刺さっているのも不気味。魔物の予言に翻弄されて次々に殺し、最後には殺されてしまう。あの時予言を聞かなければ、あの時王を殺さなければ。それでも王になると聞いたら欲望を抑えられないのは人間の性なのだろう。
 
 
 
 
 
 
東京グローブ座。そこに丸山隆平は居なかった。居たのはマクベスでありマルベスだった。膨大な量のセリフ。そこに乗せる感情。いっぱい悩んでいっぱい考えたんだろう。マクベスはグローブ座で確かに生きていた。良い言い回しが見つからないけれど1つ言えるのは最高だった。丸山座長をはじめ、キャスト、スタッフで造り上げたマクベスは最高だった。丸山隆平さんは「マクベスの悲しき生きざまを全身全霊で届けたい」とおっしゃった。シェイクスピア四大悲劇と言われるマクベスは本当に悲しく、涙の出たシーンもあった。私自身、初めてのシェイクスピアであり初めての舞台観劇が“主演・丸山隆平 マクベス”だったことを誇りに思う。丸山隆平さんを通してマクベスを知り、シェイクスピアを知れた事は大きな出来事だ。これを機に、他のシェイクスピア作品にも触れてみたい。そして舞台上で美しく輝く彼の姿を何度でも観たい。円盤化をしてほしいと願うばかり。素敵なキャストの素敵な作品に出会えた事に感謝。マクベスカンパニーの皆さんお疲れさまでした。